2019/8/24 益田へ

2020年5月30日

(今日のセーリングは楽できるやろうなぁ)

ヨットに向かう途中はこれしか考えていなかった。
昨日の夜から友達&後輩が遊びに来ているため今日は五人でのセーリングだ。
五人で島根に突入するわけだが楽しさとかワクワクとかよりも「楽ができそう」ってのが一番の期待だった。

僕は楽なことが好きである。
めんどくさいことが起きそうだと思ったら何とかして楽にできないかと常に考えている。
そんな僕にとって(ヨット部時代の)後輩が来るのは何よりの朗報だった。

(今日は舵持たずにダラダラできるぞ)

基本的に舵を持つのは好きだが天気のいい日はダラダラしながら昼寝や釣りをしたいと思っている。
五人だしゆっくりした一日を過ごせるとこのときは思っていた。

いつもと違うメンバーが二人乗るということでコジマとミズキもテンションがあがっていた。
友達はヨットに乗るのは初めてだというのでお客さんポジションに座ってもらいいざ出航。
想定通り後輩(とミズキ)に舵を任せ、まったりセーリングしていたところ・・・

「なんか魚がはねてる!」

水面をピョンピョン飛んでいる魚がいる。
飛び方的にトビウオではない。
魚に詳しくない僕は「へぇ〜」くらいで見ていたが、

「カツオだ!!」

この声で一気にテンションが上った。
(これ釣ったら絶対に食べられるやつやん)
今までは大きさでしか判断していなかったがカツオなら問答無用で食べられると瞬時に悟った。
水面を飛ぶカツオのめずらしさにテンションが上がる一同、絶対に釣ってほしい(他人任せ)と思う僕。
このときの心情は一人浮いていたと思う。

すぐにコジマが戦闘態勢に入った。
僕も必死に応援&撮影する。
ここで釣れたら今日の撮れ高OKだ。と考えるあたり少しづつカメラマンポジションが定着してきた。

・・・
・・・・・・

残念ながら釣れなかった。
ただ食事中のカツオを見れたのは嬉しかった。
こういった自然のままの生き物を見れるのもヨット旅の醍醐味である。

その後セーリングを再開しバウ(ヨットの前側)あたりでまったりしていた。

(なんか後ろ側で会話してるな・・・)

なんとミズキが後輩にクラゲ講座(?)をしていた。
聞き上手な後輩は長時間それを聞いていたのだ。
いつも聞き流している僕たち二人と違い手応えを感じたミズキは延々とクラゲについて話していた。
そのとき!

「おぉ!おうおうおうおうおう!おぉ!」

急にミズキが叫びだした。
なんかクラゲを見つけたらしい。
どうでもよかったが本人曰く「この旅ではいろいろなクラゲも写真に撮りたい」とのことですごく重要なことだったらしい。

そんなクラゲ講座を冷ややかに見ていたらあっという間に釣りポイントに着いた。
そう、お昼ごはんチャレンジの開始である。
昨日と違って人数が多いため三人全員が釣りに集中できる。
操船&カメラ&タモを任せられる人間がいるのは安心だ。

釣り開始。(ミズキの写真はなかった)

僕はとりあえず習ったとおりに底をとり(海底にルアーを着底させること)、そこから根魚を狙った。

・・・
・・・・・・

「キター!」

早速コジマに当たりがきた。そのまま難なくキジハタを釣り上げた。
コジマの「キープしましょう」という言葉を聞いてお昼ごはんを食べられることを確信した僕のテンションも上がる。

「きました〜」

続いてミズキから声が上がる。
いつも人の釣った魚に対して「小さいな」としか言わない男に対する二人の反応は冷ややかだ。
さらにコジマは前日イサキを釣ったときにタモを用意してもらえなかった件もある。
ここぞとばかりにイジる二人+友達&後輩。
それらに負けずにミズキはイサキを釣り上げた。

(今日のご飯は豪華やな)
僕の頭はこんな考えでいっぱいだった。
自分で釣れるのが一番だが誰かが釣ってくれたら新鮮な魚は食べられるため、すでに満足感に満たされていた。
そんな僕にも奇跡が起きた。

「きたーー!!」

明らかに昨日のアジ(小さい)よりも重いひきだ。
食べられる魚だと予想した僕はラインを切られないように(壱岐で切れてからしばらくビビってた)習ったことを思い出しながら引き上げる。
キジハタだった。
大きさとかはどうでも良くて自分で食べられる魚を釣ったことがすごく嬉しかった。

その後コジマは大物狙いに切り替えていた。
ミズキは根魚狙ったり大物狙ったりしている。
僕はひたすら根魚を狙っていた。というよりも他の魚の狙い方がわからなかった。
その作戦が功を奏し、追加でキジハタが三匹も釣れて僕は大満足だ。
なんとなく釣りのコツを掴んできた気がする。

「うぉ!!!」

なんかミズキが叫びだした。
足でも滑らせたかと思いきや竿がすごいしなっていた。
明らかに大物である。
ただごとではない空気を感じた全員がサポート体制に入る。
(撮れ高めっちゃあるなぁ〜)
僕はカメラマンの心境がわかってきた。
そうこうしているうちに魚が水面まで上がってきた。

「ヒラス!」

まさかの大物に全員のテンションは上がる。

ブチンッ

一気に全員のテンションはさがった。
(まあいっぱい釣れてたし動画的にはこれもありやな)
ひねくれ者の考え方も身についてしまった。


友達&後輩の帰宅時間になったので途中でおろし、そこで魚を捌くことにした。
コジマがイサキをお刺身にしてくれた。
相変わらずキレイに捌いてくれる。

僕はこの旅の間に魚をシメられるようになることと捌けるようになることを目標としている。
いつか小さい魚や自分で釣った魚でチャレンジしたいものだ。

「うまっ!」

魚は寝かせてから食べたほうが美味しいという人もいるが、釣ったばかりの魚も負けていない。
しかも釣ったばかりの魚を食べられるのは釣り人の特権だ。
その特別感が後押しして刺し身が一層美味しく感じる。
刺し身を食べながらミズキミズキの方を見ると・・・

なんか指なめてるw

実は事件はすでに起きていた。
それはコジマと船の中で魚を捌いているときだった。

「イタイッ」

外からミズキの大きな声が聞こえてきた。
とりあえず放置しておいて、魚を捌くなどの作業が一通り終わったところで外を見てみると後輩が半笑いでミズキを心配していた。
(これは大丈夫なやつやな)
内容を聞く前に安心できた。

「ウニに刺されたんよ〜」

ミズキの声を聞いて笑いが止まらない。
とりあえずウニの棘が指に刺さったことだけはわかったが、どうしてそんなことが起きたかはわからなかった。
本人はウニに刺されたと言っているがウニが突進してきたわけでもあるまいし、大方転がってたウニを素手で触ったんだろう。

その後色々調べた結果、指に刺さったのは「ガンガゼ」の棘らしいということになった。
Wikipediaで調べてみる。

針の危険性
一般的なウニであるムラサキウニやナガウニ、バフンウニなどは、手に乗せて多少押しつけるなどしてもそうそう刺さらず、刺さったとしてもほとんど深傷にはならない。しかしガンガゼの長い刺は細くて鋭く、その先端はごく容易に人の皮膚に突き刺さる。表面に逆刺があり、しかも折れやすいために、皮膚内部に折れて残ることが多く、ひどく痛む。南日本の海岸で見られるウニとしてはほとんど唯一気をつけるべき種である。なお、ガンガゼ以外で有毒なウニとして知られるラッパウニ、イイジマフクロウニなどはむしろ棘が短く、バフンウニに似た形状をしている。

日本本土の海岸では、たいてい岩陰から棘だけが出ている。棘は非常に長いので注意すれば判別も容易だが、物陰だけに気が付かずに触れてしまう例も多い。中には遊泳中に波にゆられて接触したために刺された例もある。後述の近縁種も含め、分布域内の岩礁域では十分な注意が必要である。

唯一気をつけるべき種である

よくもまあピンポイントでやばいやつに刺されたものだ。
「病院に行ったら?」という友達のアドバイスを男らしく断り、ミズキはそのままセーリングする決断をした。
友達&後輩は少しだけ心配しつつお別れした。

三人になった後は風向・風力がいい感じになりスムーズに目的の益田に到着することができた。
釣った魚は食べ切れず明日のお昼ごはんとしてストックしたので、明日のご飯の心配はない。
それよりも僕は風邪気味だったためそっちのほうが心配だった。
明日の朝起きたらミズキにガンガゼ事件の詳細を聞こうと思いながら一人はやめに就寝した。